



2010年03月16日 (火) | 編集 |
鷲田康 = 文
西武のドラフト1位ルーキー・雄星投手の試行錯誤が続いている。
初めてのプロのキャンプ。
1軍スタートはしたものの、結局は力不足が露呈。
オープン戦からはファームに合流して再調整をすることになった。
「段階を踏んでやっていく。
まずシート打撃から入って、教育リーグで打者と対戦させるつもり」
2軍落ちを決めた渡辺久信監督は、
今後の育成方針をこう明らかにした。
10年、いや20年に一人の素質であることは誰もが認めている。
天性のしなやかさ。
特に雄星の特長は肩甲骨の可動域の広さとヒジの柔らかさだ。
体に巻きつくように腕がしなり、放たれたボールは独特の伸びを生む。
腕が遅れて出てくることによって
打者からリリースポイントが見えにくいという特長もある。
投手として教えても教えられない腕と体の使い方ができるからこそ、
大器としての期待が膨らむのは当たり前だった。
だが、それでも現段階では1軍のレベルには届かないというわけだ。
~“プロの方が楽”という横浜高校の過酷な走り込み~
西武ではタイプこそ違うが同じように高卒ながら、
プロ1年目から頭角を現わした投手がいた。
松坂大輔(現レッドソックス)と涌井秀章の二人の右腕だ。
ニ人とも鳴り物入りで入団し、1年目から着実に1軍で歩を進めてきた。
松坂は4月の初先発でいきなり155キロをマークして
プロ初勝利を挙げると、その年16勝をマーク。
涌井も開幕には1軍ベンチに入りし1年目から13試合に先発、
6月18日のヤクルト戦で初勝利も挙げている。
「あの二人に比べると少し時間がかかるかもしれないね」
高卒即戦力となった二人と比べて雄星は、
長い目で見るべきだと指摘する声が首脳陣の間でも多い。
それでは松坂、涌井と雄星の違いは何なのか?
それは下半身の“完成度”の差だった。
「松坂が入ってきたときに一番びっくりしたのは下半身の大きさだった」
こう振り返るのは育ての親と言われる
東尾修元西武監督だった。
確かにパワーピッチャーの松坂は、体全体の筋力も強かったが、
下半身、特にお尻周りの大きさは高校生離れしたものがあった。
比較的、スマートな体型の涌井も、
実は下半身の筋肉に関してはかなりなものがある。
そして二人に共通するのは、
名門・横浜高校出身ということだった。
「とにかく横浜高校の野球部は死ぬほど走らせる。
本当に反吐がでるまで走らされて、
1年生から徹底的に下半身を鍛えられる。
横浜のOBたちは、プロ入りしても
“走ることに関しては、プロの練習の方が楽だ”
というぐらいですからね」
ある球団のスカウトの証言だ。
~横浜・筒香が証明した横浜高OBの驚異的なスタミナ~
実はいま売り出し中の同校OB、
横浜のドラフト1位ルーキーの筒香嘉智内野手も、
キャンプで周囲を驚かせたのがそのスタミナだった。
184cm、88kgとちょっと太目の体型で、
いかにもすぐに息が上がりそうにみえるのにどうしてどうして……。
「走ったら中堅、ベテラン選手がへとへとになっている中で、
筒香は涼しい顔してメニューをこなしていたの。
只者ではないと思った」
(横浜担当のベテランスポーツ紙記者)
横浜高OBの凄さはここでも証明されていたわけだ。
もちろん雄星も決して走らなかったわけではないだろう。
ただ、何人ものプロ野球選手を輩出し、
プロ関係者も認める横浜高野球部に伝わる
下半身強化のメニューで鍛えられた松坂らと比べると、
やはりプロ入りしたときの雄星には差があった。
だからプロの世界の最初の一歩を技術から入れた松坂や涌井に比べて、
雄星はまず体の強化となったわけだ。
そう考えると改めて、
松坂と涌井を生んだ横浜高校野球部の凄さが身にしみてくる。
【筆者プロフィール 鷲田康氏】
1957年埼玉県生まれ。
慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。
およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。
2003年に独立。
日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、
Numberほか雑誌・新聞で活躍。
著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、
『ホームラン術』(文春新書)がある。
西武のドラフト1位ルーキー・雄星投手の試行錯誤が続いている。
初めてのプロのキャンプ。
1軍スタートはしたものの、結局は力不足が露呈。
オープン戦からはファームに合流して再調整をすることになった。
「段階を踏んでやっていく。
まずシート打撃から入って、教育リーグで打者と対戦させるつもり」
2軍落ちを決めた渡辺久信監督は、
今後の育成方針をこう明らかにした。
10年、いや20年に一人の素質であることは誰もが認めている。
天性のしなやかさ。
特に雄星の特長は肩甲骨の可動域の広さとヒジの柔らかさだ。
体に巻きつくように腕がしなり、放たれたボールは独特の伸びを生む。
腕が遅れて出てくることによって
打者からリリースポイントが見えにくいという特長もある。
投手として教えても教えられない腕と体の使い方ができるからこそ、
大器としての期待が膨らむのは当たり前だった。
だが、それでも現段階では1軍のレベルには届かないというわけだ。
~“プロの方が楽”という横浜高校の過酷な走り込み~
西武ではタイプこそ違うが同じように高卒ながら、
プロ1年目から頭角を現わした投手がいた。
松坂大輔(現レッドソックス)と涌井秀章の二人の右腕だ。
ニ人とも鳴り物入りで入団し、1年目から着実に1軍で歩を進めてきた。
松坂は4月の初先発でいきなり155キロをマークして
プロ初勝利を挙げると、その年16勝をマーク。
涌井も開幕には1軍ベンチに入りし1年目から13試合に先発、
6月18日のヤクルト戦で初勝利も挙げている。
「あの二人に比べると少し時間がかかるかもしれないね」
高卒即戦力となった二人と比べて雄星は、
長い目で見るべきだと指摘する声が首脳陣の間でも多い。
それでは松坂、涌井と雄星の違いは何なのか?
それは下半身の“完成度”の差だった。
「松坂が入ってきたときに一番びっくりしたのは下半身の大きさだった」
こう振り返るのは育ての親と言われる
東尾修元西武監督だった。
確かにパワーピッチャーの松坂は、体全体の筋力も強かったが、
下半身、特にお尻周りの大きさは高校生離れしたものがあった。
比較的、スマートな体型の涌井も、
実は下半身の筋肉に関してはかなりなものがある。
そして二人に共通するのは、
名門・横浜高校出身ということだった。
「とにかく横浜高校の野球部は死ぬほど走らせる。
本当に反吐がでるまで走らされて、
1年生から徹底的に下半身を鍛えられる。
横浜のOBたちは、プロ入りしても
“走ることに関しては、プロの練習の方が楽だ”
というぐらいですからね」
ある球団のスカウトの証言だ。
~横浜・筒香が証明した横浜高OBの驚異的なスタミナ~
実はいま売り出し中の同校OB、
横浜のドラフト1位ルーキーの筒香嘉智内野手も、
キャンプで周囲を驚かせたのがそのスタミナだった。
184cm、88kgとちょっと太目の体型で、
いかにもすぐに息が上がりそうにみえるのにどうしてどうして……。
「走ったら中堅、ベテラン選手がへとへとになっている中で、
筒香は涼しい顔してメニューをこなしていたの。
只者ではないと思った」
(横浜担当のベテランスポーツ紙記者)
横浜高OBの凄さはここでも証明されていたわけだ。
もちろん雄星も決して走らなかったわけではないだろう。
ただ、何人ものプロ野球選手を輩出し、
プロ関係者も認める横浜高野球部に伝わる
下半身強化のメニューで鍛えられた松坂らと比べると、
やはりプロ入りしたときの雄星には差があった。
だからプロの世界の最初の一歩を技術から入れた松坂や涌井に比べて、
雄星はまず体の強化となったわけだ。
そう考えると改めて、
松坂と涌井を生んだ横浜高校野球部の凄さが身にしみてくる。
【筆者プロフィール 鷲田康氏】
1957年埼玉県生まれ。
慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。
およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。
2003年に独立。
日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、
Numberほか雑誌・新聞で活躍。
著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、
『ホームラン術』(文春新書)がある。
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この記事へのコメント
高校野球などアマチュア野球の問題の一つには、アマチュア止まりの選手とプロを目指す選手が同じメニューをこなしている事だと思います。ソフトバンクの王さんが数年前に、プロレベルではない選手にプロレベルの選手と同じ指導をするのは適切ではないと指摘しています。
2010/03/17(Wed) 20:48 | URL | 一花 #-[ 編集]
一花さん、お久しぶりです。
お元気でしたか?
いつも熱心に分け隔てなく選手の研究をされる姿に
感心させられております。
春の高校野球も明日からですね。
一花さんの記事を参考に、
楽しく見させてもらいます。
お元気でしたか?
いつも熱心に分け隔てなく選手の研究をされる姿に
感心させられております。
春の高校野球も明日からですね。
一花さんの記事を参考に、
楽しく見させてもらいます。
2010/03/20(Sat) 14:51 | URL | kuni28 #-[ 編集]
ありがとうございます。私の場合、ちょっと独自色が強すぎるかも。適当に読み流して下さい。
昨年は、当初横浜・筒香、亜大・中田からスタートして、清峰・今村をトップに注目しました。
今年からは、ちょっと変えて、今年の候補に限定せずに、世間一般の評価を気にせず私のチェックポイントをクリアした候補だけ認定候補にリストアップする事にしました。
昨年は妥協して、菊池も最終的に追加しましたが、今年からは貫く事にしました。
現時点で、1.早大・斎藤、2.PL・吉川、3.亜大2年・東浜、4.帝京2年・伊藤、5.興南・島袋、6.王子製紙・熊代、7.宮崎商2年・吉田を認定候補としています。
有名候補の一二三、大石、澤村らが入っていませんが、何となく疑問があるまま
風評に流されるのは止める事にしましたです。
選抜は、帝京2年・伊藤、広陵・有原、花咲徳栄・佐藤遊撃手、興南・島袋に注目してます。
あと今年は、監督の特徴、指導にも注目していきたいですね。指導者の影響がいかに大きいか、最近特にそう思います。
昨年は、当初横浜・筒香、亜大・中田からスタートして、清峰・今村をトップに注目しました。
今年からは、ちょっと変えて、今年の候補に限定せずに、世間一般の評価を気にせず私のチェックポイントをクリアした候補だけ認定候補にリストアップする事にしました。
昨年は妥協して、菊池も最終的に追加しましたが、今年からは貫く事にしました。
現時点で、1.早大・斎藤、2.PL・吉川、3.亜大2年・東浜、4.帝京2年・伊藤、5.興南・島袋、6.王子製紙・熊代、7.宮崎商2年・吉田を認定候補としています。
有名候補の一二三、大石、澤村らが入っていませんが、何となく疑問があるまま
風評に流されるのは止める事にしましたです。
選抜は、帝京2年・伊藤、広陵・有原、花咲徳栄・佐藤遊撃手、興南・島袋に注目してます。
あと今年は、監督の特徴、指導にも注目していきたいですね。指導者の影響がいかに大きいか、最近特にそう思います。
2010/03/23(Tue) 21:49 | URL | 一花 #-[ 編集]
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