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宮本慎也が若手に伝えたかったこと。果敢なヘッドスライディングの意味。
2009年10月15日 (木) | 編集 |
                     鷲田康 = 文  

去年のオフにずっと一塁へのヘッドスライディングについて
取材していた時期があった。

取材で会った選手や野球関係者に
「どう思いますか?」と聞いて回った。  


きっかけは一昨年の北京五輪アジア最終予選で
ソフトバンクの川崎宗則内野手が一塁に
ヘッドスライディングをしたのを、
シアトル・マリナーズのイチロー外野手が
「かっこ悪い。アマチュアみたいなことをするな」  
と怒ったという記事を読んだことだった。

高校野球ではよく見る光景だが、最近は
「一塁へは駆け抜けた方が早い」というのが定着して、
甲子園大会でもめっきり見る回数が減ったように思える。
  

プロの選手、特に若い選手の多くは
「やっぱり駆け抜けたほうが早いし、
 ヘッドスライディングはケガのリスクがある。
 心情としては川崎さんの気持ちも分からないではないけど、
 やっぱりイチローさんの言うことのほうが理にかなっている」
という答えが多かったように記憶している。  
  


~宮本慎也はイチローの持論に真っ向勝負する~  


そんな中で
「駆け抜けたほうが絶対に早いですか?
  ヘッドスライディングしたら、アンパイアがもしかしたら
 “セーフ”って、両手を広げてくれるかもしれないじゃ
 ないですか!」
と反論した選手がいる。

北京五輪でキャプテンを務めたヤクルトの宮本慎也内野手だった。

 そして宮本はその言葉を実践した。
  

クライマックス・シリーズへの出場権を巡って
阪神、広島と激闘を続けていた9月28日。
直接のライバルとの対決となった阪神戦(神宮)の3回、
遊ゴロを放った際に、一塁に猛烈なヘッドスライディングを試みたのだ。
  

一塁に頭から滑り込んだ結果はアウトと親指の剥離骨折。

ヘッドスライディング直後、親指の痛みに思わずうずくまる宮本。
しかしこの後、彼は怪我のそぶりを一切見せることはなかった。
結果は……最悪だった。
  

審判は両手を広げるのではなく、高々と右手を上げた。
しかも、一塁ベースに突いた右手親指には激痛が走った。

 親指の骨が剥離骨折していた。
  

「イチローに怒られますね」

あのときの会話を振ると、宮本は苦笑いを浮かべてこう続けた。

「でも、僕は試合に出ているからいいんです。
 1試合休んでしまったけど、もう迷惑はかけない」
  

翌日の試合は欠場したが
30日の阪神戦では右手親指に添え木を当てて、
包帯を巻いたままの姿でショートを守った。
6回の第3打席では右前安打を放って、
親指を骨折しているそぶりは全く見せなかった。   
  


~チームに活を入れるためのヘッドスライディングだった~  

野村克也監督(現楽天監督)の下で、
かつては優勝戦線の常連だったヤクルトが、
Bクラスに低迷するようになって久しい。
今のチームで、その時代を知る選手は宮本ぐらいしかいなくなった。
  

今季は久々に開幕から白星を重ねて
初めてのクライマックス・シリーズ出場へのチャンスを得た。
ところが夏場過ぎて成績が急降下。
阪神、広島とのAクラス争いが激しさを見せ始めた直後に、
宮本がこんなことを話していた。
  

「0-2とか1-3とか真っ直ぐ一本に絞って待っても
 いい場面で注文どおりに
 真っ直ぐがきてもバットが出ない選手がいる。
 固くなっているんです。
 こういう経験をもっとしないと、チームは強くならないですね」
  

優勝争いの重圧、ここ一番で負けてはいけない試合を勝つ力……
修羅場をくぐり抜けていくために必要なプラスアルファを
どういう風に若い選手に伝えていくか。
それがベテラン選手にとっての務めでもあると思っている。

だから宮本は自然と一塁にヘッドスライディングで
飛び込んでいってしまったのかもしれない。
  

激痛をこらえてプレーを続ける宮本が伝えたかったもの。
包帯を巻いた右手ではボールはまともには握れない。
打撃では詰まったときに激痛が走る。
  

「でも、痛いとか投げられないとか見せたらいかんでしょう。
 内角のボールにドン詰まって“うぉ~!”って
 いうことがあったけど、“顔に出したらいかん。
 顔に出したらいかん”と思って、一塁まで走りました」
  

イチローに怒られないためにも、
チームの若い選手に勝つことの難しさを伝えるためにも――
一塁にヘッドスライディングすることが、
決してマイナスにはならないことを、
身をもって証明しなければならない。




~筆者プロフィール 鷲田康~  

1957年埼玉県生まれ。
慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。
およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。
2003年に独立。
日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、
Numberほか雑誌・新聞で活躍。
著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、
『ホームラン術』(文春新書)がある。


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