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工藤公康の起用法に物申す!
2009年09月03日 (木) | 編集 |
田端到氏=文

先日、NHKで放送された
『球団が消える? プロ野球選手会103日間の闘い』。

'04年、オリックスと近鉄の球団合併騒動をめぐり、
日本プロ野球選手会が史上初のストライキを敢行。
当時の古田敦也選手会会長と、
松原徹事務局長のふたりを主人公に、
選手会とNPB(日本野球機構)との息詰まる交渉の模様を、
ドラマ仕立てで再現したドキュメンタリーだ。

古田敦也が、オーナーたちとの交渉の席で
「おまえは労働基準法を知ってるのか?」などと
意地の悪い攻められ方をされる対策として、
試合の合間を縫ってカラオケボックスで弁護士と
法律を勉強していた、といったエピソードも初めて知ったが、
いちばん目頭が熱くなったのは、
工藤公康投手(当時巨人)が発言する場面だ。

巨人の選手に松原事務局長が交渉の内容を報告に行ったとき、
工藤がみんなの前でこう話す。

「自分たちは何もしてないので、申し訳ないと思っている。
 でも、現実に話し合いに出向いている古田や、
 礒部(当時の近鉄選手会長)や、
 三輪(当時のオリックス選手会長)に、
 球団から圧力が掛かるようなことがあったら、
 ぼくたちは立ち上がる。
 今度はぼくたちが彼らを守ると、そう伝えてください」

あくまでも再現ドラマの中の工藤が発言したものだから、
脚色もあるかも知れないが、
普段は敵同士としてグラウンドの中で戦っている選手たちの団結と、
前線に立つ者を支える彼の力強い決意表明。
球界最年長の大投手の言葉に、涙腺が緩んだ。

224勝の名左腕に対して横浜は礼を失していないか?
その工藤公康が、今、苦悩している。  


 32試合登板、2勝2敗、防御率7.27(8月26日現在)。

実働28年目のシーズンとなる今季は、
初先発となった4月8日の巨人戦で8失点KOされ、二軍降格。
その後は中継ぎに回り、
5月25日の楽天戦で607日ぶりの白星をあげるなど健在を示してもいるが、
打ち込まれる場面も多く、防御率は7点台。

直近の登板は、8月21日の中日戦、
5点リードされた7回にマウンドに上がる敗戦処理だった。
その前は8月18日の巨人戦、
やはり5点リードされた7回に登板する敗戦処理。
その前は8月12日のヤクルト戦、ワンポイントで2球投げただけである。

私が問題にしたいのは、工藤の数字上の不振ではない。

横浜ベンチの、現在の工藤の起用法はあまりにも酷くないだろうか。

通算224勝の名左腕に対して、礼を失していないだろうか。

奮闘する工藤に不意に訪れる全盛期のようなピッチング。  

忘れられないのは、8月4日のヤクルト戦だ。
この日、同点の10回表にマウンドに上がった工藤は絶好調で、
素晴らしい投球を見せた。
145km前後の伸びのある快速球で、
武内を三振、ガイエルを一ゴロに仕留め、
「おお、なんだ、この球は!
 工藤はもう終わりなんて誰が言ったんだよ!」と、
私はテレビの前で驚愕したものである。
一時の不振を脱し、
全盛期にも劣らない球威とキレを取り戻しているように見えた。

もっと工藤の球が見たい。
どん底から這い上がってきた46歳の不屈のピッチングを
じっくり見せて欲しい。
そう思って身を乗り出したら、工藤の交代が告げられた。
左打者をふたり打ち取ったところでお役ごめん。
工藤が投げたのは、わずか8球だった。
絶好調は本人も自覚していたのだろう、マウンドを降りるとき、
珍しく悔しそうな仕草で降板に未練を見せた。

私は工藤の投球に興奮させられたのと同時に、
たとえ予定通りだったとしても
ここで降板させる横浜ベンチの“センス”に落胆した。

46歳の大投手が、泥にまみれ、敗戦処理もいとわず、
毎日登板の準備を重ねる中で、
ふいに現れる全盛期のようなピッチング。
その価値をもっと尊重する気持ちがあれば、
あの場面で機械的な交代は告げられないはずだ。
工藤に代わった木塚はたちまち打ち込まれ、
決勝点を奪われただけに、なおさら残念でならなかった。


それ以来、私は工藤ウォッチャーとなり、
横浜の試合の途中経過を気にしながら、
工藤の登板を見逃さないように気をつけてきた。
そして横浜ベンチの、
この球界の宝に対する扱いがあまりにも非礼ではないかという
結論に達した。

工藤の現在の登板機会は2パターンしかない。
点差が離れた試合での敗戦処理か、
他の投手がピンチを招いた末の左打者へのワンポイント・リリーフ。

それでも起用に一貫性があればいいが、
前回は敗戦処理、
今回は外野フライさえ許されないような状況でマウンドに上げられ、
前進守備の内野を抜けるゴロを打たれてサヨナラ負けでは、
気の毒としか言いようがない。
勝ちゲームで使うのか、負けゲームで使うのかすら、
決まっていないのだ。

今、工藤の登板を告げるアナウンスが流れたときの
スタジアムの盛り上がり、
どーっと沸き上がる声援の大きさは、それだけで胸が熱くなる。
工藤が投げるという、
ただそれだけで多くの人の心を動かす力があることを、
横浜ベンチはどう受け止めているのだろうか。

ちなみに同じ種類の声援は、中日の試合でも聞くことが出来る。
代打・立浪和義が告げられたときだ。
しかし、立浪が代打に送られるのは基本的にいい場面だけであり、
それがミスター・ドラゴンズに対する落合監督の礼儀なのだと思う。
そういえば落合監督は、リリーフに回った工藤に
「そんな姿は見たくないぞ」と声をかけたと聞いている。

偉大な投手として引退する時に、引き際をどう飾るのか?
この原稿を書き終えた8月26日の夜、
阪神戦で工藤が久しぶりに鬼気迫るピッチングを披露した。
2イニングを投げて被安打1、奪三振3。
最後の打者・金本知憲に投げ込んだストレートは
全球が140kmを超え、
最後は146kmのシュートで空振り三振。これでこそ工藤公康だ。 

昇った太陽は、いつか必ず沈む。
その太陽が沈みゆくときに見せる夕焼けの美しさは、
理屈抜きに私たちを感動させる。
しかし、夕焼けの赤い空はいつでも拝めるものではなく、
いくつかの条件が揃った時にだけ現れる貴重な風景だ。

私は工藤公康という、球界を照らし続けた太陽の夕焼けを見逃したくない。



~筆者プロフィール~ 田端到氏
1962年、新潟県生まれ。コラムニスト。
競馬、野球の分野を中心に活躍し、
著書に監督采配をデータから論じた「図解プロ野球 新・勝利の方程式」、
「パーフェクト種牡馬辞典」など多数。
ヤクルトスワローズ愛好家でもある
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