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中島裕之の“飛ばさない技術” ~天才的打撃の真髄~
2009年09月01日 (火) | 編集 |
「それはムリやろ……」

ヤクルト・宮本慎也内野手が思わずクビをひねった。

「いや、ホンマですよ」

こう周囲を見回したのは、西武の中島裕之内野手だった。

昨年の北京五輪の直前合宿中のある夜だった。
練習が終わって壮行会と称した内輪の食事会での話だ。
焼肉をつつきながら話題は自然と打撃論へと発展していった。

宮本を絶句させた中島の天才的打撃術とは。
そのときだ。
中島がこんなことを言い出した。

「ボクは崩されたときに自分のスイングを変えるんじゃなくて、
 体を合わせていって最後に“あそこに落とそう”って
 右手の押しで調整しています」
  

その言葉に即座に宮本が返したのが
「ムリやろ」というひとことだった。
  

宮本いわく、
崩されてもバットの角度で打つ方向は決められる。
しかし、打球を落とす場所まで調整するのは
いくらなんでも不可能ではないかということだった。
  

だが、中島は
「(信じてくださいという顔で)最後は右手の押し込み方で落とせます」
と言い切った。
  
宮本は
「やっぱりナカジ(中島)は天才なんですよ」と
呆れた顔で絶句した。

バッティングにおける両手の働きは、
車に例えて前の手(右打者なら投手よりの左手)がハンドル、
後ろの手(同捕手よりの右手)がエンジンといわれる。
  

投手の投げたボールに引き手の前腕でバットをコントロールして
正確にコンタクトする―
ハンドルをどう切るか、
そしてバットがボールとコンタクトした瞬間に後ろの腕で
押し込んでパワーを伝える―
エンジンをどう吹かすかということだ。
もちろん最大のエンジンは下半身にあるが、
最後の最後にパワーを伝えるのが、
実はこの後ろの手の押し込みとなるわけだ。
  


「右利きの左打者」の弱点を克服した松井秀喜。  
「最大の問題はボクが右利きの左打者だということです」  

ヤンキースの松井秀喜外野手がこう言い出したことがあった。
2003年のオフのことだ。
メジャー挑戦1年目のシーズンを終えた松井が、
メジャーで感じた最初の壁だったかもしれない。
  

右利きの左打者の後ろの手は利き腕ではない左手になる。
器用さ、パワーに欠けるその左手をいかに力強く、
巧みに操れるか。
  

「メジャーでホームランを打つためには
 外角の球を逆方向に打てる技術とパワーが必要。
 そのためには左手の押し込みがきちっとできないとダメなんです」
  

メジャーでホームラン打者として成功できるかどうかは
後ろの手の押し込みにかかる。
松井の結論だった。
  

不自由な後ろの手を鍛えるために、
松井はそのオフ、左手で箸を持ち、ボールを投げて
ウエートトレーニングでも重点的に左手を鍛えた。
翌年、本塁打は31本へと増えた。 
  


~右手の押し込みで飛距離を加減する中島の才能~  

中島の話に戻ろう。
中島の打撃の最大の特徴は広角に強い打球が打てる点にある。  

昨年は21本塁打を放って、
そのうちの約半分となる11本が中堅から右方向の打球だった。
今季も右方向への長打が多く見られるのは、
この右手の押し込みの強さの表れだった。
  

そして宮本をして「天才」と言わしめる最大の特徴は、  
そのエンジンの出力を自由自在に操れる点にあるようだ。  

「ゴルフのピッチングウエッジを打つ感覚ですね。
 フルショットもあるし、点で置いていくショットもある。
 そんな感覚で打席に立っています」
  

右手の押し込みは飛ばすときだけに使うのではない。
時には外野の守備位置までボールを飛ばさないように、
その押し込みを加減する。

このボールを飛ばさない技術こそ、
中島が天才である所以なのかもしれない。  



≪筆者プロフィール≫
   鷲田康
1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、
報知新聞社入社。
およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。
2003年に独立。
日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、
Numberほか雑誌・新聞で活躍。
著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、
『ホームラン術』(文春新書)がある。
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