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『臥薪嘗胆』 離島から感動を全国に―。 (1)
2007年04月29日 (日) | 編集 |
 すっかり古びてしまった日誌がある。
 伊志嶺監督が2003年に八重山商工の野球部に赴任して
 以来、1年間書き続けた野球部活動日誌である。
 わずか4年ほど前のものではあるが、
 今となってはとても考えられないような
 地道な日々が綴られている。
 練習メニューの具体的内容から、その時の選手の様子、
 さらには監督の率直な思いなど、文字に隠された
 心の内は いかばかりだったか。

 4月16日 主力メンバーが休みの為、シートノック出来ず
 5月12日 朝練に来ない
 5月31日 試合中マナーが悪いと注意すると ふてくされて
       反抗する。午後から休み。
 6月14日 大会まで1週間なのにメンバーが集まらない。
 7月22日 新チーム始動も参加人数4名。
 7月31日 2名。
 8月9日  秋季大会不参加を話し合いで決定。
 12月11日 1名。
 1月2日  2名。 7時~16時まで練習。
 2月1日  防球ネット9台、バッティングケージ1台完成。


 ほんの一部の抜粋だが、この時期こそ伊志嶺監督にとって
 まさに冬の時代だった。
 最初の夏を突貫工事でベスト8という、周囲も驚く好結果を
 導き出したにもかかわらず、次に待っていたのが選手の
 大量退部。
 最後に残ったのはわずか2名で、夏休み明けた9月1日
 伊志嶺監督は手帳に『あと205日』とメモ書きしている。
 翌春、1年生が入部してくるまでの日数である。  

 だがその間、日誌を見ると練習メニューは実に多彩で
 手を抜いた形跡は一切無い。  
 練習態度が悪ければ叱り飛ばし、次なる目標を常に掲げさせて
 練習に取り組ませた。
 並行して、自身は黙々とネットなどの補修作業。
 『うみんちゅ(魚師)並みにうまくなったよ』と笑うが
 そこまでの強固な意思をよく半年以上も持続して
 いられたものである。

 『二人にやめられたら困るとか、そんな邪念は全く
  抱かなかった。練習を軽くしたらどうかという声も
  あったが、そんな中途半端な事がどうして出来ますか?
  そりゃあ気分いいわけは無いですよ。
  市から担ぎ出され、5万円の報酬で納得して始めた事だけど
  あれこれ言われ議会でも取り上げられる羽目に
  なっちゃって。 それでも続けられたのは、やるからには
  結果を出すという信念と、やっぱり野球が心底
  好きだったからでしょうね
』―。

 辛いと思ったのは、むしろ自分ではなく2人の部員に
 対してだった。
  
 この人数では到底試合をする事は出来ない。
 試合を通じてより野球の面白さを知ることが出来るというのに
 それを味合わせてやれない悔しさ。
 ご苦労さんとの思いで夕飯をご馳走するくらいが
 精一杯だった自身への苛立ちは、とても大きかった。
  

 『大人たちは皆、お前の指導が悪いんと決め付ける。
  ケツバットも年中行事で、だから辞めていくんだと。
  でも子供達からは、そういう答えは出てこないんです。  

  辞めていった生徒に聞いても、ただもっと自由に普通の
  高校生活が送りたかっただけで、叱られる事には文句は無い、
  理由は分かっているからと言う。
  その証拠に、監督について行き甲子園に行けよと
  残された仲間を励ましているんです。
  
  それでも親や諸先生、多くの大人は、生徒が辞めた原因を
  僕から導き出したいんでしょうね。
  毎日朝練が始まる前に1時間ほど自転車を走らせながら
  考え事をしてはため息ばかりついていました
』―。

 辛く厳しい冬を我慢努力すれば、
 夢叶う春が必ずやってくる―。
  

 今も色紙にしたためる言葉である。
 伊志嶺監督は赴任前、小学生チームの八島マリンズ、
 中学生チームの八重山ポニーズを率いてきたが
 子供達にひたすら言い続けたのは
 『なぜ石垣から甲子園に行かれないんか』だった。
 チームという組織を作り上げるには、まず 挨拶や礼儀作法
 といった生活態度と、野球に対する強い意識を作りあげねば
 ならない。  そして、それこそが島に最も欠けている点だと
 訴え続けたが、その思いを理解させるのは容易ではなかった。


 『自然の豊かな島で野生児的に体を鍛え、のびのび過ごす
  ことが出来るから、それこそ運動神経に長けた子供が多い。
  半面、野放し状態で生活の基本がありません。
  島全体がそうなんです。 だから子供達だけではなく
  私の言っていることを親にも理解してもらわねばならない
  これが本当に大変でした』―。

 野球用具が買えない子供には自分が用意し、遠征費を
 払えない子供にも旅費を立て替えたりした。
 ゴミ処理回収業を営みながら自分もギリギリの生活なのに
 回収できないお金と分かっていても手を差し伸べてしまう。  
 そこまでしておきながら、子供の親から幾度も罵声を浴びた。
 裏切られた気持ちになって、もう面倒は見まいと思った事は
 数知れない。 でもその都度、『子供には罪が無い』と
 心を入れ替えていったという。
  

 就任の翌春、待ちに待った1年生の入部の日、日誌には
 “臥薪嘗胆”“鉄心石腸”。  
 八島マリンズ時代から育ててきた大嶺祐太、金城長靖らの
 加入だったが、彼らとの日々こそまた戦いだった。

 『センバツが決まってからも、朝は起きてこないし
  平気でウソはつくし。 ちっとも慌てなくて、こっちが
  何か言うとハイハイと返事だけしておいて後ろ向いたら
  舌を出してるし。 これはね、しょうがない。
  地域性だから。 沖縄タイムならぬ“石垣タイム”があって
  7時集合だったら7時半前後に始まるからそれくらいに
  行けばいいや、という感覚。
  取材フィーバーが始まっても彼ら、全然変わらない。
  それも島の人々はシャイという人間性も関係してるんです。
  来る人、来る人びっくりしいて、ある人はこの姿が特徴なら
  いいんじゃないんですか、って言ったんだけど、
  僕は許せないんですよ、絶対に』―。

 普通の高校野球とはひと味もふた味も違う事件の連続だった。
 マイペースの選手達に真っ向挑む伊志嶺監督の姿が
 テレビのドキュメンタリー番組で何度も紹介され
 マスコミがいようといまいと素のまま本音でぶつかり合う
 光景は圧巻だった。
 監督に大声で注意された金城が、逆に監督の胸倉を掴んで
 きたこともある。
 テレビカメラが目に前にあったが、伊志嶺監督は
 ちゅうちょせず、こう叫んだ。
 『お前がやるなら俺もやるよ!甲子園なんかムリに
  行かなくたっていいんだ!お前らに こういう事を
  許してまで、甲子園に行こうとは思わない!』

 それはまさに、監督と選手という関係を超えた父子の
 戦いだった。
 そんな選手達に大きな変化が見られたのが
 センバツ出場後である。
 初戦で悲願の初勝利を挙げたが、2戦目の対横浜戦で
 惜しくも敗退。 勝ったゲームを落とした、と
 伊志嶺監督はキッパリ言う。

 『これこそが日頃の行い。 チームに一番足りないものが
  出たんです。平気で手を抜き、相手に合わせた野球をする。
  肝心な時に大嶺がやった怠慢なタッチプレーや走塁など
  その典型です。だから、夏に向けて彼らに言ったのは
  “球道一心”。生活態度を正し、当たり前のことを
  当たり前にやる。その上で心をひとつにしてやろうと』―。


 遅刻常習犯・大嶺が何より時間を守るようになった。
 夏、甲子園に旅立つまでに練習に遅れたのはわずか2回。
 でもその1回が甲子園出発前日で、監督はそれを
 断固許さなかった。
 『わずか1分だったんだけどね。出発日の朝は練習しない
  予定だったのですが、急遽返上して5時半に開始しました。
  大嶺はこの時間に遅刻したらいかんと、前日から学校に来て
  校舎の片隅で寝ていたらしい。
  
  それがまた噂になって、監督は出発の朝も練習させたと。
  また悪者ですよ(笑)』

                 ~続く~
  
 
  
 
   
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コメント
この記事へのコメント
離島から感動を全国に
 まさに打ち込んだ青春の想いが伝わりますね。

「辛く厳しい冬を我慢努力すれば、
 夢叶う春が必ずやってくる―。」 

 冬来たりなば春遠からじ と同様に、汗を流した者だけが手にする
感動なのでしょうか。

 渡辺美樹社長は、お金には色がある、と言います。身体で汗を流して努力の結晶で貯めた資本金を元に起業をしたと言います。

 また寄らせて頂きます。

 

 

 



2007/04/30(Mon) 11:57 | URL  | humanite #-[ 編集]
humanite様、コメントありがとうございました。  この記事は、私の愛読書『輝け甲子園の星』から抜粋させて頂きました。  何度も読み涙しました。  伊志嶺監督の思いを 皆さんにもお伝えしたく、この場を借りて載せました。  子供たちを想う真の指導者。 心で会話できる伊志嶺監督の ふところの大きさに、感銘を受けます。  また遊びにいらして下さいね。  ありがとうございました。
2007/04/30(Mon) 12:39 | URL  | kuni28 #-[ 編集]
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