日々様々なスポーツ界での出来事や、気になった記事を取り上げ考えていくブログです。
スポンサーサイト
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
一戦必勝体制の横浜ベイの救世主? 心を入れ替えて復活した吉村裕基
2011年05月13日 (金) | 編集 |
       村瀬秀信=文

今季、特に劇的な変化が感じられる選手がいる。
10日はソロ、そして8日のサヨナラと
2戦連続本塁打を放った吉村裕基だ。

2000年代序盤から中盤。
当時チームは弱くとも内川、古木、村田、多村、吉村……
なんて圧倒的な才能を感じさせる若手がベイスターズには存在した。

なかでも吉村は高卒4年目の'06年に26本塁打で
レギュラーを獲得した早熟の逸材。
足を高く上げた豪快なスイングと、
「歌舞伎投げ」と呼ばれる美しすぎるフォロースルーで
多くのファンの心を鷲掴みにし、応援歌
「ハマに勝利を呼び込む豪快なスイング、
 ユーキ!ユーキ!狙えスタンド遥か」
の歌詞通り、翌'07年は24本、
'08年には34本塁打を放ち村田らに続く横浜の看板打者に上り詰めた。

だが結果を残したとはいえ、
まだアラも多く好不調の波も激しい。
その当時インタビューしたある野球解説者の吉村評も
ひどいものだった。

「あまりにも考えなしにバットを振り回しすぎだよね。
 チームがタイムリーを欲しい場面で
 明らかなワンバウンドに手を出して三振してる。
 彼はチームじゃなくて自分のために野球をやってる。
 考えて野球をやらないと先はないよ」

解説者の予想通り、翌年から吉村は極度の不振に陥った。
'09年打率.248、16本塁打。
さらに昨年は49試合で打率.205、本塁打3本。
5月には二軍落ちと吉村にとってプロ人生最悪の2年間となった。


~ライトを守る背後で容赦なく浴びせられた残酷な野次~

この間、輝ける期待の大砲の溌剌とした姿はどこにもなかった。
得点圏にランナーを置いても無策な一発狙いでバットは空を切り、
外野の守備でも凡ミスを連発。
そんな吉村のプレーに、ライトスタンドのファンからのタメ息、
そしてヤジは日増しに激しさを増していき、
いつしか一部ファンから応援歌を
「タマ~に勝利を呼び込む~豪快なスイング、ユーキ! ユーキ!
 狙うと打てなーい」なんて替え歌まで歌われる始末。

「嫌いだったり、憎いわけじゃないんですよ。
ただ、守備の雑さも、
狙うと打てないがタマには勝利を呼び込む豪快なスイングってのも
事実でしたからね。
彼に対するイメージそのまんまの替え歌ですよ」(替え歌を考えたファン)


~ライトを守る吉村の背中から聞こえる強烈なヤジ~

かつて同じように不振にあえぎ守備でもやらかしていた
古木克明(現格闘家)が、
「何を言われても、頑張れと言われても
 バカにされているようにしか思えなかった」と
気を病んでしまったように、
味方から背中を撃たれるものほど応えるものはない。

~野次に対して頑なな態度をとり続け、沈んでいった吉村~

 それでも、多くのプロ野球選手はその壁を乗り越えてきた。

自軍の応援団の目の前でプレーするライト(もしくはレフト)は、
ある意味メンタルのポジション。
暗黒時代の辛い罵声を乗り越えて現在の地位を築いた
阪神の桧山のような選手を見ていると、
その壁の前でどう振る舞えるかが選手としての
分かれ道のような気さえしてくる。

 だが、野次に対して吉村は頑なになった。

ライトスタンドの声援にも応えないことが多くなり、
サインボールも内野席だけに投げ入れる。
それでも声援を送り続けるファンはもちろんいたが、
吉村の態度にこれまで擁護していたファンも少なからず呆れかえった。

「こちらを見ないように後ろ向きでバックしながら守備位置に着く。
 『吉村コール』にも後ろを向いたまま帽子をちょっと取っただけ……
 なんてこともありました。
 こちらの野次が原因だってことはわかっていますけど、
 あの態度には腹が立つ以前に、あ然としました」(ライトスタンドのファン)

両者ともに汲むべき事情はある。
だが、その関係は修復不可能なところまでこじれていた。
弱いとこんなことまで起きてしまうという典型的な例というべきか、
なんというべきか。

当の吉村は苦しんでいた。
自分のスタイルを見失ったかのように打撃フォームはくるくると変わり、
昨シーズンには'06年以来はじめてファームに落とされ、
最後まで復調は叶わず。
レギュラーは下園辰哉に奪われて、オフには大幅減俸の提示。
新聞紙上にはトレード要員という報道も出るなど、
文字通り崖っぷちにまで追い込まれていた。
高卒4年でレギュラーを取ってからのこの浮き沈み。
平静でいられるわけがなかった。

~昨年オフに囁かれた言葉「もう吉村はダメだろ」~

「もう別人になっちゃったよね。
本当は明るくて素直な子なのに、
球場で挨拶しても下を向いて素通りしちゃうし、
どうしちゃったんだろう」 

 以前から吉村を知る人は、その変貌ぶりに戸惑っていた。

「もう吉村はダメだろ」

昨年オフ、そんな言葉を何人の横浜ファンから聞いただろうか。
それまでの吉村に向けられていた期待はすべて
2年目の筒香へと移行したかのように、
その名前を聞く機会はパタリとなくなってしまった。

多村が去り、相川が去り、古木が去り、内川も去った。
ベイスターズの未来を背負って立つはずだった彼らと同じように、
吉村に懸けた夢もまた露と消えて行くのか。

~“ハマの毒舌家”中野渡進氏までが認めた劇的な変化~

筆者が吉村復活の兆を知るのは、昨年オフ、
国分寺でもつ鍋を食べている時だった。

「吉村はやるんじゃねぇの。
 キャンプで中根さんと一緒にめちゃめちゃ練習してたけど、
 目の色が全然違ったからな」

普通の人が褒めるならまだしも、
発言の主はベイスターズとケンカしてプロ野球を引退した、
毒しか吐かない元横浜の中継ぎ投手であり店主の中野渡進氏である。
彼が横浜の選手を褒めるなんて事件と言ってもいい。

それ以降、吉村の言動に注目し始めた。
昨オフから中根コーチと徹底的に新フォームの完成に取り組み、
自主トレは取材陣もシャットアウト。
大きく足を上げ、
フルスイングする従来の豪快なバッティングフォームを捨て、
シンプルなスイングにこだわった打撃を求めた。
さらに、これまで固執し続けていた本塁打も
「捨てる」というようなことまで漏らしている。

吉村の中で何かが変っている気配はしたが、
確信したのはキャンプ中のこんな発言だ。

「昨年は本当に悔しい思いをしたし、このままでは終われない。
 自分自身、本気で覚悟を決める時がきたと思います。
 今年も横浜スタジアムのライトスタンドをバックに守りたいです」

忌避していたライトスタンドを意識したような発言。
去年までの吉村の態度を知る人からは信じられないのだが、
その覚悟は開幕後に本物であることがわかる。

~ファンサービスでも見違えるような変化を見せた吉村~

開幕戦、スタメンを勝ち取った吉村は新打法が機能したのか
4打数4安打の大活躍を果たした。
ライトスタンドのある女性ファンは、
サインボールを投げ入れてきた吉村に感動しきりだった。

「昨シーズンの最後の方にもちょこちょこ投げるようには
なってくれていましたけど、今年は態度が明らかに違っていて驚きました。
表情が柔らかくなったというか、
いろんなものを受け入れようとしてくれているのが動きや言葉から
感じられるようになった気がします」

~ファンから向けられた声援に応える~

タイムリーヒットを打てば、塁上からファンに向かって拳を突き上げる。
ホームラン談話では
「ファンの声援がスタンドまで運んでくれました」
なんて殊勝なコメントを出してしまう。

今シーズン、吉村のそういう言動に出会う度に、
幸せな何かが込み上げてくる。
いや、他球団ファンからすれば、
「幸せの敷居が低すぎる」と笑う話なのかもしれないが、
それが今までできなかったのがベイスターズなのだ。

もちろん、すべてが改善されたわけではない。
吉村は相変わらず三振が多いし、守備でもボーンヘッドをやらかす。
現時点で4本塁打なのに7打点など、ヤキモキさせられることは多い。
ファンの方から野次も相変わらず飛ぶ。

 だが、復活した吉村はそんなことじゃ腐らない。

サヨナラホームランを打ち、でんぐり返しでホームイン!!

 5月8日の阪神戦だ。

それまで16打席連続無安打で迎えた9回の打席。
考え込み暗くなりがちだった吉村は、
「こんな暗い顔をしていたらダメだ」と、
笑って打席へ向かいサヨナラホームランを放った。
さらに、おどけてでんぐり返しでホームインした吉村は、お立ち台で叫ぶ。

「ベイスターズファンの皆さん、
センターの守備位置で気持ちが下向きになりそうな時に
頑張れと言ってくれた右中間のファンの皆さん、
今日はありがとうございました!」

あんなに笑っている吉村の顔を見るのは、
今回のベイスターズの4連勝よりも遥か遠い昔の出来事だった気がする。

「楽しもうと思う」

2年間のどん底を経て尚もそんな言葉が言えるのは、
どんなに結果が出なくても腐らずに戦おうとする決意、
そして自分の真後ろにある、
ライトスタンドを背負っていこうという覚悟があるからだろう。

~「去年までの僕の野球は子供だったと思います」~

「過去は過去と割り切りました。
 自分で言うのもなんですけど、
 去年までの僕の野球は子供だったと思います」

試合後のコメントを聞いて確信した。
吉村は壁を一歩乗り越えたのだ。
そして、それはライトスタンドで野次を浴びせていたファンにも
同じことがいえよう。

「昨年、二軍落ちしたときに
『やっぱり吉村がいないと寂しい』と気づかされたんです。
 まだ打撃も守備も雑さは残っていますが、
 今年は覚悟を持ってやっているのが伝わってきますし、
 頑張っていると思います。
 そりゃ嬉しいですよ。嫌いなわけじゃないんだから。
 吉村にはすぐ後ろにはファンがたくさんついているってことを
 忘れないでほしい。ただ、
 気の抜けたプレーには容赦なく野次りますけど(笑)」(野次の中心人物)

~不幸な関係を乗り越えた絆は強くなる~

ハマスタで声の限りにユーキ! と叫べる幸せ。
そんなものが続いていけば、
ベイスターズは玉砕覚悟のこのシーズンをも乗り越えていける。

スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック