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今までの横浜ナインの野球感を覆す、カウント1-3における渡辺直人の選択
2011年01月12日 (水) | 編集 |
                鷲田康 = 文 


このオフ、ある意味、最も衝撃的だった発言は、
昨オフにロッテから横浜に移籍した橋本将捕手が1年間、
横浜にいて感じたというこの言葉だった。

「このチームでは、ありえないことが当たり前になっている」――。

橋本によると
「試合中にベンチにいる選手が少ない」など、
他チームでは考えられない出来事に、
横浜では当たり前のように遭遇したというのだ。

確かにこれまでも某主力選手は途中交代すると、
ベンチ裏に下がってソファーで寝そべりながらテレビ観戦を決め込んでいた――
そんな話も聞いたことがある。
他チームでは打ちこまれた投手も、
アイシングが終わればベンチに戻って声を出す。
そういうことは常識中の常識だと思っていたが、
横浜ではどうやら違うようなのだ。

尾花高夫新監督を迎え、これまでの大雑把な野球から
「アナライジング・ベースボール」を掲げて
野球スタイルの一新を図ったものの、
シーズン中には監督と主力選手の不協和音がささやかれ、
終わってみれば3年連続最下位。
しかも、シーズン中に身売り騒動が表面化し、
オフには主力の内川聖一内野手がFAでソフトバンクに移籍した。

 そして橋本のこんな爆弾発言だ。

~暗い話題ばかりの横浜に渡辺直人が明るい光を注ぎ込む~

2010年の横浜にいい話なんか何もなかったが、
唯一ともいえる朗報は、
楽天から渡辺直人内野手を金銭トレードで獲得したことだった。

「(楽天では)最高の仲間と最高の野球ができたことに感謝したい。
 でも、今日からはお互いに頑張って最高のステージ(日本シリーズ)
 で戦えれば……。
 今度は敵になるので、楽天を叩きつぶしたい」

突然のトレード通告に涙した渡辺の気持ちも、
もうすっかり吹っ切れていた。

渡辺は今季、楽天では規定打席には届かなかったが
115試合に出場して打率は2割6分5厘、本塁打は0、打点も26と
レギュラーとしては不満の残る数字だった。
星野仙一監督が遊撃手のレギュラーとして
メジャー帰りの松井稼頭央内野手を考えるのは、
仕方ないことでもあった。

~“自分で自動待て”が3割5分3厘の高出塁率に結びつく~

だが、渡辺にはあまり目立たないが、特筆すべき数字がある。

 それは3割5分3厘という出塁率だ。

「カウント1-3になったら“自分で自動待て”をかけているんだろ?」

 ある選手が、こんなことを渡辺に聞いたことがあるという。

「……」

企業秘密もあるので、本人は言葉を濁したそうだが、
この沈黙が答えでもあった。

1-3は圧倒的に打者有利のカウントだが、
そのシチュエーションで渡辺はほとんどバットを振ることがない。
四球の可能性があるので、
そこで我慢して“自分で自動待て”と決めているのだ。

~打率2割6分5厘でもチームにとっては3割打者と同じ価値が~

カウント1-3というヒットカウントで我慢していたら、
その打者はなかなか3割は打てないだろう。
ただ、選手が3割を打つにはおいしいカウントでも、
チームにとっては安打も四球も意味は同じなのだ。
より高い確率で出塁できる、
安打を打てる可能性を捨てても四球をとる。
渡辺はその可能性を選択する選手、ということだ。

逆に言えば、だからこそ打率2割6分5厘でも、
出塁率は1割近くアップする。
実質的に渡辺はチームにとっては3割打者に匹敵する能力を秘めた選手、
ということになるわけだ。

2010年シーズン、横浜の選手で100試合以上出場して
出塁率が3割5分を越えたのは内川(3割7分1厘)と
下園辰哉外野手(3割6分5厘)の2人しかいなかった。
しかも、そのうちの1人の内川がソフトバンクに移籍してしまった。

塁に出て、まずチャンスを作るリードオフマンがいない。
そう考えると、横浜には渡辺のような選手がいかに必要か、
ということが鮮明になってくる。

~個人プレーに走りがちな横浜ナインを渡辺が変える!~

そして、もう一つは、橋本を驚愕させた横浜の常識を変えるために、
渡辺獲得は一つのきっかけになるはずだ、ということだ。

 選手が勝手気ままに野球をやる。

横浜ではカウント1-3は、
一発長打を狙う絶好のバッティングチャンスだった。
もちろんそれが全面的に間違いだ、というつもりはない。
ただ、その選択だけならば打てれば勝てるが、
打てなければダメという、
これまでのスタイルからの脱却は永遠に不可能だということだ。

その横浜に風を送る存在となりえるのが、
カウント1-3から“自分で自動待て”をかけられる渡辺という選手だった。

あとはこの選手のそういうやり方を、
選手個々にきちっと気付かせられるかどうか。
選手としての存在価値をどう評価するか。
そこが2011年の首脳陣、フロントの大きな仕事になるはずである。


【筆者プロフィール 鷲田康氏】

1957年埼玉県生まれ。
慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。
およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。
2003年に独立。
日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、
Numberほか雑誌・新聞で活躍。
著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、
『ホームラン術』(文春新書)がある。
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