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咆哮する猛虎メディアを手懐けた、城島健司の言葉を尽くすプロ意識
2010年12月06日 (月) | 編集 |
                 氏原英明 = 文 


初っぱなのヒーローインタビューからして痛快だった。

 開幕戦でのことである。

「長崎県佐世保市から来ました城島健司です。
 (中略)いい時も、悪い時もありますから、悪い時は、みなさん、
 お手柔らかにお願いします」

今年、阪神に入団した城島は開幕戦で3安打4打点のド派手なデビューを飾って
お立ち台に上がると、そういってファンを喜ばせたのである。

翌日にはサヨナラ本塁打を放ち存在感を見せつけると、
全144試合に出場し、シーズン3割3厘28本塁打を記録。
ゴールデングラブ賞も獲得した。
11月21日にはチームの勝利に貢献するプレーをした選手に贈られる
「ジョージア魂」賞の年間大賞に選出された。

 つごう1年で、完全にタイガースファンの心をつかんだのである。

~関西の虎メディアをも魅了する城島の豊潤な言葉~

いや、ファンだけではない。
きわめて特殊と言われる“タイガース・メディア”でさえ、
同様なのである。
彼の放った輝くようなパフォーマンスと、
開幕戦に代表されるような痺れる一言一句の虜になっていた。

「ジョーさんはプロ中のプロですよ。
 どんな時でも、質問に答えてくれますし、話が面白い。
 多分、数えてもらったら分かると思いますが、負けた翌日の紙面は、
 ほとんどジョーさんですよ。
 負けても話してくれるんです。
 本当はそうあってはいけないんでしょうけど……。
 もちろん活躍すれば載りますし、
 1週間でどんだけジョーさん使うねんって感じですよ」

 とは、あるトラ番記者の証言である。

今季、城島はどんな試合になっても、メディアの前に立ち続けてきた。
勝った時はもちろん、敗戦の責任が自身にありそうな時でも、
矢面に立って来た。
敗戦時には口数が少なくなる選手が多い中、
彼だけはどんな時も必ずメディアの前で口を開いてきたのである。

その心構えは、まるでインタビューに答えることが
プロのアスリートの仕事であるかのようだった。

~過剰なまでのタイガース依存が選手とメディアの軋轢を生む~

 プロ野球選手とメディアの関係―――。

中日・落合監督とメディアの関係があまり良くないということが
漏れ伝わってくることはあったが、
タイガース・メディアもこれまでそう上手くいっていたとは言い難い。

一部主力選手が新聞報道に掲載された自身のコメントを、
ブログで真っ向から否定するということが、かつて何度かあった。

そういう不幸な出来事の裏側を今までの経験から推測すると……
上司から「何が何でもコメントを取ってこい」と厳命を受けた記者が、
口数の少ない選手の声を断片的に拾って記事を書くからそうしたことが
起こるのだろう。
ひどい場合は、質問にちょっとうなずいただけでも、
あたかも選手が話したかのように書く場合もあると、聞いたこともある。

お互いが仕事だという観点に立ち返れば、
ユニフォームを着ている以上は勝った時しか話さないというのは、
プロのアスリートとしての務めを果たしていないといえる。
しかし、だからといって、記者が都合のいいように
記事を書いていくというのも大問題である。
どちらが悪いかという問題ではなく、
そうした悪循環が渦巻いていることが、いびつな現象を導くのだ。

~記者の問いかけに野球哲学で応答する城島のクレバーさ~

記者とのやりとりという点においても、城島の取材は非常に面白い。

彼はただ質問に答えているのではなく、
一人の選手として野球についての「語り」を入れてくれるのだ。

例えば、6月4日のオリックス戦で下柳の好投を引き出すと
「やっぱりピッチャーはストレートですよね。
 どれだけ、変化球がいい投手だって言っても、ストレートが走らないとね。
 下さん(下柳)もそう感じたでしょうね。
 まぁ、下さんは、前から分かっていたでしょうけど」と答えた。

7月20日の広島戦では、延長10回表、1死一、三塁のピンチで、
相手のスクイズのサインを見破りながら、
ウェストした球をバットに当てられたことがあった。
「やってはいけない失敗だった。
 バットに当てられないところに投げさせないといけなかった。
 僕の指示で野手の全員が動くわけだし、そこは反省しないといけない。
 敗因にならなかったことだけが救い。
 打ってくれた野手に感謝です」といった風だ。

~理路整然とした城島の言辞にはメディアも襟を正す~

とはいえ、城島はただ従順に対応してきただけではない。
的を射ないメディアの質問に対し、真っ向から反論することもあった。

6月5日の対オリックス戦、
9回裏、4-9で負けている状況で一塁走者だった城島が二盗を決めた。
試合の大勢が決まっている展開で盗塁をすることは
「挑発行為だとオリックスの岡田監督を怒らせたのではないか」
という質問が飛ぶと、城島は言い返した。

「岡田さんが言っているのは
 勝っているチームが負けているチームにした時に問題だと
 言っているんでしょう。
 勝っているチームが譲る塁は行くでしょう。
 アメリカだろうが、日本だろうが。
(遺恨について)みなさんが騒いでいるだけで、
 やっている選手は意識していないですよ」

6月30日の中日戦ではチェンに抑えられ、
「今年チェンの調子は良くないけど、今日は良かったですね」
と問われると、城島は血相を変えた。

「誰がそんなこと言ったの? 俺言った? 言ってないよ。
 チェンは前からもずっといいよ、いい投手だよ」

こうしたやり取りを繰り返していくと、
メディアの方も城島と向き合うようになる。
紙面を埋めるだけのコメントを取るような当たり前の質問を避けるようになるのだ。

城島はシーズン中盤以降、常に
「今日の勝負どころ」について語るようになったのだが、
それが記者の方からも的を射た話がでると、城島はにっこりと笑ったものだ。

「そこだよ、俺もあの場面が勝負どころだと思ったよ。
 分かるようになったんじゃない」

 そう言った後は、すらすらと試合を振り返るのである。

まさに、これがメディアと選手との友好な関係なのだろう。
選手はある一定の時間を割いてくれる。
一方で、聞く方も節度を持って質問する。

そこにあるのは、どちらもプロフェッショナルという意識である。

~プロとしての姿勢を言葉で表現することの重要性~

この1年間、城島がそうしたプロフェッショナルな姿勢を保ち続け、
メディアもそれに応えた。
だから、両者の関係は友好だった。

城島が作り出した選手とメディアの関係は、
タイガース・メディアを変えるきっかけになるかもしれない。
もちろん、城島に度量の大きさがあったことは確かだが、お互いがプロフェッショナルであるという姿勢を保ち続けられれば、城島以外の選手であっても、
彼らが野球の世界にいるプロなんだということを、
その語りの中から得られるのではないだろうか。

コメントされてから数日後に選手が真っ向否定するような、
いびつな関係ではなく友好な関係でつながっていくように……。

そのあるべき姿を、城島はこの1年で示してくれた。
そんな気がしている。

このシーズンオフ、城島に膝の半月板損傷が発覚した。
最悪の場合、来シーズンの開幕に間に合わないそうだ。
せっかく、城島がいい雰囲気を作ってくれたのにと、
そういう想いもするのだが、あの城島である。
来季の開幕には元気に顔を出し、冗談っぽく言ってくれそうな気がする。

「みなさんが大げさに書きすぎなんですよ」と。


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