



2010年07月30日 (金) | 編集 |
鷲田康 = 文
まだ野球記者になって間もない頃の話だ。
グラウンドで取材をしていて、突然、どやしつけられたことがあった。
「オマエ、ナニをまたいでるんだよ!」
あるベテラン選手の怒号に下を向くと、
そこにあったのは1本のバットだった。
「バットはなあ、武士の刀と一緒なんだよ!」
バットをひったくるように拾い上げたその選手は、こう言って
「キッ」と失礼な若造記者をにらみつけたのだった。
最近はこんなことを言う選手も少なくなってきてはいるが、
職人が道具にこだわるように、
バットにこだわりを持つ選手が多いのは言うまでもない。
長さと重さ、そして形状はそれぞれの打者のタイプによって異なる。
多くの打者は自分の好みのモデルを探し出し(あるいは特注して)、
そのバットを年間を通して愛用する。
疲れが溜まってくる夏場には、
同じモデルで重さを10グラムとか15グラムぐらい軽くする、
という選手もいる。
もっと細かい選手になると、何種類か重さの違うバットを用意して、
体調によって、その中の一本をチョイスする。
いわば自分に合わせてバットを使い分けるわけだ。
~相手投手に合わせてバットを使い分ける巨人・ラミレス~
ところが中には相手によって、バットを使い分けるという選手もいる。
今季、本塁打を量産、前半戦のセ・リーグのホームランダービーで
トップを走る巨人のラミちゃんことアレックス・ラミレス外野手も、
そんな一人だった。
ラミレスは昨年までほぼ1つのモデルのバットを使っていた。
長さ34インチ、重さは920グラムのメイプル素材のものだ。
ところが今年は、それに加えてグリップを少し細くした新モデルを導入。
しかもそれぞれのタイプで今まで
より重量を10グラム軽くしたものも作った。
合わせて4種類のバットを、
相手投手によって使い分けるという芸の細かさだった。
この4種類のバットをどう使い分けるのか。
タイプ別に分類するとこんな違いがあるという。
重さの変化は相手投手の左右によって使い分ける。
920グラムのものはサウスポー用、910グラムのものは右投手用。
グリップの太さは、変化球主体の投手用には太めを、
細めのものは速球主体の投手用だ。
もちろん相手投手によって、
この基本用法をアレンジして分けているのだ。
~重量とグリップの違いを組み合わせて全球種に対応~
ラミレスは言う。
「グリップの細いバットはヘッドも利くし、
飛距離が出るような気がする。
今年打っているホームランの7割ぐらいは、
このグリップが細いタイプのバットだと思うよ」
グリップを細くして重量を重くすれば、飛距離は確実に伸びるが、
逆にヘッドが利きすぎてバットコントロールが難しくなる。
速いボールへの対応もしづらいという欠点も出てくる。
そのためにグリップが太めのものと、
重量を軽くした扱いやすいタイプも用意。
「バッティングでいちばん大切なことは、
バットをどうコントロールして、
ボールを芯で捕らえられるかということなんだ。
だから色んなバットを使い分けているのも、
よりバットコントロールを良くするための工夫ということになるね」
きちっとバットをコントロールできる
ギリギリのところで飛距離を追求しているわけだ。
その結果が今季はオールスター前までに32本塁打、
という量産ペースにつながった。
「ボックスに立つ前の準備で勝負の半分以上は決まる」
「今年はホームランキングを狙いたいね」
開幕前からこう宣言していたラミレスは、
そのためにこれだけの準備をして、
その道具を使いこなして宣言どおりにアーチを量産している。
「野球はマインド・ゲーム。
実際にバッターボックスに立つ前の準備で勝負の半分以上は決まる」
最強助っ人らしいこだわりだった。
【筆者プロフィール 鷲田康氏】
1957年埼玉県生まれ。
慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。
およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。
2003年に独立。
日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、
Numberほか雑誌・新聞で活躍。
著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、
『ホームラン術』(文春新書)がある。
まだ野球記者になって間もない頃の話だ。
グラウンドで取材をしていて、突然、どやしつけられたことがあった。
「オマエ、ナニをまたいでるんだよ!」
あるベテラン選手の怒号に下を向くと、
そこにあったのは1本のバットだった。
「バットはなあ、武士の刀と一緒なんだよ!」
バットをひったくるように拾い上げたその選手は、こう言って
「キッ」と失礼な若造記者をにらみつけたのだった。
最近はこんなことを言う選手も少なくなってきてはいるが、
職人が道具にこだわるように、
バットにこだわりを持つ選手が多いのは言うまでもない。
長さと重さ、そして形状はそれぞれの打者のタイプによって異なる。
多くの打者は自分の好みのモデルを探し出し(あるいは特注して)、
そのバットを年間を通して愛用する。
疲れが溜まってくる夏場には、
同じモデルで重さを10グラムとか15グラムぐらい軽くする、
という選手もいる。
もっと細かい選手になると、何種類か重さの違うバットを用意して、
体調によって、その中の一本をチョイスする。
いわば自分に合わせてバットを使い分けるわけだ。
~相手投手に合わせてバットを使い分ける巨人・ラミレス~
ところが中には相手によって、バットを使い分けるという選手もいる。
今季、本塁打を量産、前半戦のセ・リーグのホームランダービーで
トップを走る巨人のラミちゃんことアレックス・ラミレス外野手も、
そんな一人だった。
ラミレスは昨年までほぼ1つのモデルのバットを使っていた。
長さ34インチ、重さは920グラムのメイプル素材のものだ。
ところが今年は、それに加えてグリップを少し細くした新モデルを導入。
しかもそれぞれのタイプで今まで
より重量を10グラム軽くしたものも作った。
合わせて4種類のバットを、
相手投手によって使い分けるという芸の細かさだった。
この4種類のバットをどう使い分けるのか。
タイプ別に分類するとこんな違いがあるという。
重さの変化は相手投手の左右によって使い分ける。
920グラムのものはサウスポー用、910グラムのものは右投手用。
グリップの太さは、変化球主体の投手用には太めを、
細めのものは速球主体の投手用だ。
もちろん相手投手によって、
この基本用法をアレンジして分けているのだ。
~重量とグリップの違いを組み合わせて全球種に対応~
ラミレスは言う。
「グリップの細いバットはヘッドも利くし、
飛距離が出るような気がする。
今年打っているホームランの7割ぐらいは、
このグリップが細いタイプのバットだと思うよ」
グリップを細くして重量を重くすれば、飛距離は確実に伸びるが、
逆にヘッドが利きすぎてバットコントロールが難しくなる。
速いボールへの対応もしづらいという欠点も出てくる。
そのためにグリップが太めのものと、
重量を軽くした扱いやすいタイプも用意。
「バッティングでいちばん大切なことは、
バットをどうコントロールして、
ボールを芯で捕らえられるかということなんだ。
だから色んなバットを使い分けているのも、
よりバットコントロールを良くするための工夫ということになるね」
きちっとバットをコントロールできる
ギリギリのところで飛距離を追求しているわけだ。
その結果が今季はオールスター前までに32本塁打、
という量産ペースにつながった。
「ボックスに立つ前の準備で勝負の半分以上は決まる」
「今年はホームランキングを狙いたいね」
開幕前からこう宣言していたラミレスは、
そのためにこれだけの準備をして、
その道具を使いこなして宣言どおりにアーチを量産している。
「野球はマインド・ゲーム。
実際にバッターボックスに立つ前の準備で勝負の半分以上は決まる」
最強助っ人らしいこだわりだった。
【筆者プロフィール 鷲田康氏】
1957年埼玉県生まれ。
慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。
およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。
2003年に独立。
日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、
Numberほか雑誌・新聞で活躍。
著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、
『ホームラン術』(文春新書)がある。
スポンサーサイト
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
左肘が・・・(>。)|オサーン(´o`)なのだ!
デーブ大久保解雇! 不適切な指導!発覚・・・ なんだかな・・・ 菊地雄星もその指導にあたってチクったのも雄星かもとか三(lll´Д`) チクるようなヤツはダメだね・・・活躍出来ないだろな・・・現にただ今二軍で調整中・...
2010/07/30(Fri) 21:50:31 | 世間で話題の雑談記事
| ホーム |