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重圧克服 『仮想のテープ』
2008年07月24日 (木) | 編集 |
大阪教育大の船越正康名誉教授(69)
―スポーツ心理学専科―は、日本柔道を長く、精神面から
サポートしている。
2000年のシドニー五輪で初めて金メダルをとった
谷亮子も、その時、カウンセリングを受けた一人だった。


船越教授は、谷に言った。
『100mのランナーは、どこを見て走っていると思う?』
『テープですか?』と谷。
教授は、答えた。
『一流ランナーは、実際のテープより奥に仮想のテープを見て走る。
 今、見えているゴールを見すぎると、近づいた時、
 体が自然ではなくなるんだよ』―。


谷は1992年のバルセロナ、96年のアトランタで銀。
頂点を目前に、あと一歩が届かないでいた。
教授は、3度目の挑戦で当然、肩に力が入ることが
予想される谷を見て、
『スーッと駆け抜けるぐらいの気持ちでやってみろ』
と諭したかったのだという。


シドニーの本番直前、教授は、谷の関係者から、
こんな話を聞いて、ひそかに納得した。
『あのバカ、シドニーはこれからだって言うのに、
 「アテネも、やる」って言い出したよ』―。


シドニー当時、柔道を担当していた。
谷は念願の金メダルをとった直後、『アテネも狙う』と宣言し、
そのたくましさに驚いた記憶が残っている。
このとき、谷の仮想のテープは、まだまだ先にあったのだろう。


北京五輪まで、あと2週間。
各選手、重圧をどう克服するかがテーマににもなるが、
この例のように、目標をもっと先に設定するのも
一つの方法だと思う。
日本の選手の多くは、
『この五輪を最後のつもりで戦う』などと悲壮感が漂い過ぎて
いるような気がする。


ところで、その谷だが、32歳の今も、
『ロンドンだって、もしかしたら、もしかするかもしれませんよ』と
話す。
スーパーアスリートは、5度目の五輪も
“駆け抜け”そうな勢いだ。


          読売新聞  『熱視線』より
                       荒井秀一氏